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4連投早実佑ちゃん日本一/夏の甲子園 (日刊スポーツ) <全国高校野球選手権:早実4−3駒大苫小牧=再試合>◇21日◇決勝・引き分け再試合 あっぱれ佑ちゃん。平成の鉄腕だ。激闘が続いた夏の甲子園最終日は21日、駒大苫小牧(南北海道)と早実(西東京)で37年ぶりとなる決勝再試合が甲子園球場で行われ、4−3で早実が逃げ切り初優勝を飾った。早実のエース、斎藤佑樹(3年)は前日(20日)の延長15回引き分けの疲れも見せず、この日も完投。18日の準々決勝から4日連続完投で、今大会7試合、69イニングをほぼ1人で投げ切る鉄腕ぶりを発揮した。4戦連続2ケタで春夏通算104奪三振(歴代2位)も記録。全国のファンをくぎ付けにしたタフネス右腕が、ついに頂点に立った。 ひたすら感情を押し殺してきた斎藤のほおを、熱いものが伝った。2日がかりの決勝戦。満員札止めの甲子園。斎藤を支えてきた家族、ベンチ入りできなかった部員が待つアルプス席へあいさつに走りだした途端、ポロポロと涙がこぼれ落ちた。「王先輩も荒木先輩もできなかったことを成し遂げられたことが一番うれしいです。仲間を信じてマウンドに立ってきました。こんな体に生んでくれた親に感謝しています」と、声が震えた。 ふだんは心優しい18歳が、マウンド上では最後まで冷静沈着だった。4−1で迎えた9回表無死一塁。最大のピンチで、甘く入ったスライダーを3番中沢にバックスクリーン左へ運ばれた。「もう1度冷静になって、最初から3アウトを取ろう」。ひと呼吸おいて、空を見上げた。気持ちをリセットすると、4番本間篤をキレのあるスライダーで空振り三振。2死後、田中にはこの日115球目で147キロの表示で球場をどよめかせ、最後は144キロ直球で空振り三振に切った。 18日の準々決勝から4連投のマウンドだった。前日20日の決勝で延長15回、178球を投げた後は、ハリ治療と高酸素濃度カプセルに1時間入って疲労回復に努めた。試合前は「不思議なくらい肩が軽い」とケロリ。序盤から右投手の生命線である右打者への外角直球をていねいにコースに集め、スライダーとのコンビネーションで6試合連続完投。初戦から7試合69回、合計948球の熱投だった。奪三振は4試合連続の2ケタ13Kで合計78個として、歴代単独2位に浮上した。 驚異的なスタミナと精神力で、球史に残る再試合をものにした。今春センバツで横浜に敗れた後、毎日グラウンド裏の起伏のあるコースを走り込んだ。さらに早大のエース宮本賢(4年=関西)から伝授された、重心を下げたフォームで球速は5キロアップの149キロに成長。和泉実監督(44)は「斎藤はすべて自分で考えて練習した。私が言うことは何もなかった」と脱帽した。 最後はクルリと振り返って両腕を突き上げた。駒大苫小牧が始めた「NO・1ポーズ」で喜びを爆発させた。クールに見られがちだが、もともとは感情を表に出すタイプ。熱くなりそうになると、母しづ子さん(46)からもらった青いハンカチで汗をふいて気持ちを落ち着かせた。「自分にとってポーカーフェースには計り知れない力がある。相手打者に気持ちを悟られないのはもちろんだけど、ガッツポーズで自分の気持ちが不安定になるのも嫌なんです」と話した。試合中のペース配分だけでなく、感情までもコントロールできるところが、斎藤の真骨頂なのだ。 甲子園でヒーローになった斎藤が、創部101年の古豪・早実を初優勝へと導いた。中学の卒業文集で「荒木大輔2世になる」と書いて上京。荒木氏の準Vを超え、新たな歴史をつくった。数々の記録だけでなく、記憶にも残った男、斎藤佑樹。しゃく熱の甲子園のマウンドで一番輝いていた。【鳥谷越直子】 |
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駒苫・田中、準Vも悔いなし/夏の甲子園 (日刊スポーツ) <全国高校野球選手権:早実4−3駒大苫小牧>◇21日◇決勝再試合 3連覇ならず。北の怪物、力尽く…。南北海道代表の駒大苫小牧が引き分け再試合となった決勝で、早実(西東京)に3−4で惜敗した。1回途中から救援登板したエース田中将大(3年)は7回1/3を投げ、4安打4奪三振も3失点を喫した。チームは20日の延長15回引き分けと2試合計24イニング、5時間33分の死闘の末、涙をのんだ。公式戦の連勝記録は「48」、夏の甲子園の連勝は「14」でストップした。 全身全霊のフルスイングだった。1点差に詰め寄った9回表2死走者なし。打席の田中は早実のエース斎藤に「男と男」「力と力」の勝負を挑んだ。ファウルで2球粘った7球目。144キロの直球に、銀色のバットが空を切った。 聖地に響くサイレンが最後の夏の終わりを告げた。「自分のスイングができました。見逃しじゃなく、空振り三振で悔いはありません」。マウンド上でNO・1ポーズを掲げる早実ナインに背を向け、ゆっくりとダッグアウトに向かい、静かにバットを置いた。最後まで涙は見せなかった。 高校野球人生のラストゲームで力尽きた。1回裏2死一、二塁のピンチに先発菊地翔太(2年)からマウンドを引き継いだ。2回と6回に長打を浴び、それぞれ1点を失った。7回は先頭打者の死球から追加点を許した。「相手の方が一枚上でした」。香田誉士史監督(35)は「取られても1点で抑える。あの子のすごさであり、勝負強さです」とねぎらった。 大会NO・1投手の座を相手エース斎藤に譲った。この日の最速は自己記録に7キロ及ばない143キロ。理由は明確だった。大阪入り直前に発熱で体調を崩した。開幕前は腸炎による下痢に苦しんだ。おかゆしか口にできず、初戦で脱水症状に陥り、バランスを崩した。大会中にフォーム修正を余儀なくされた。「終わったこと。言い訳にしたくありません」。この日も自身に黒星こそつかなかったが、高校最後の甲子園は、怪物らしさを取り戻せないまま終わった。 チームの連勝は「48」でストップした。昨春の北海道大会以来448日ぶりの黒星で夏甲子園の連勝も「14」で止まった。しかし、73年ぶりの偉業にあと1歩まで迫ったエースの遺伝子は後輩の胸に深く刻み込まれた。菊地は「ピンチでも粘り強く、強気な投球を見習いたい」。今大会出番のなかった対馬直樹(2年)は「普段の生活、練習に取り組む姿勢…。人間として尊敬できます」と敬意を表した。 まだ、夢は終わらない。決勝終了後、日本高野連から全日本選抜チームのメンバー18人が発表された。本間篤史主将(3年)とともに名を連ね、日米親善試合(29日出発、ニューヨークほか)で同世代のメジャーリーガー候補たちと対戦する。さらに今秋の高校生ドラフトで地元日本ハム、巨人など複数球団の「1巡目指名」が予想される。進路を問われ「上でやりたいと思います」ときっぱり。「プロですか」の問いに「そうです」と即答した。 閉会式終了後だった。2日がかりの死闘を終えた駒大苫小牧ナインは静粛を取り戻した甲子園で「感謝」の胴上げを行った。香田監督に続き、186センチ、83キロの強固な体が計3度、聖地の空を舞った。両肩にテーピングを施し、今大会6試合計52回2/3を投げ、54三振を奪った。「たくさんの人たちの応援が力になりました。感謝の気持ちでいっぱいです」。春夏の甲子園通算で計12試合8勝0敗の成績を残した。記録にも、記憶にも残る、エースだった。【白船誠日】 ○北海道内監督、関係者コメント ◆北照・河上敬也監督(47) 甲子園で試合を重ねるごとに成長し、強くなっていったように感じます。リードされた状況でさえ、楽しんでいるように見えました。すごい力に感服しています。 ◆白樺学園・戸出直樹監督(30) 今大会の最後の最後まであきらめないでやる姿勢。9回にドラマを起こしてくれるのでは、と思わせるような雰囲気を持ったすごいチームでした。 ◆札幌光星・合坂真吾監督(30) 感動しました。どうやったらあんな強いチームがつくれるんでしょう。うちもまねできる部分からまねさせてもらおうと、新チームの練習では駒苫さんを見習って走塁をさせています。南北海道大会の決勝は大きな財産となりました。 ◆高橋はるみ北海道知事(52) 球史に残る大熱戦の連続、そして最後まであきらめない粘り強いプレーに心から感動しました。チームの強い思いが実を結んだ素晴らしい準優勝です。北の大地に笑顔で戻られるのを、道民の皆さんとともに楽しみにしています。 ◆岩倉博文苫小牧市長(56) 夏の甲子園3連覇という夢はかないませんでしたが、闘志あふれる全力でプレーする駒苫球児の姿は全国の皆さんの心に焼き付いたと思います。心に響く大きな感動と勇気をいただきました。17万市民を代表して感謝いたします。 ◆上田文雄札幌市長(58) 残念、無念。しかし立派でした。本当にお疲れさま。2日間にわたる決勝での激闘は素晴らしかった。市民も君たちの勇姿に一喜一憂し、何事にも立ち向かう勇気をもらいました。誇りに思います。準優勝おめでとう。ありがとう。 |
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