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<大停電>首都圏、31万人足止め お盆「真っ暗」… (毎日新聞)
 クレーン船が送電線を損傷させて発生した14日の大規模停電。お盆休みの首都圏は混乱に見舞われた。都内の地下鉄や私鉄は各地でストップし、通勤や行楽客約31万人以上の足が乱れた。新交通システム「ゆりかもめ」はレインボーブリッジの上で立ち往生。エレベーターに閉じこめられる人が相次いだ。道路では信号機が消え、「よく事故が起きなかったものだ」とタクシー運転手。大規模停電に対する首都のぜい弱さが露呈した。

 ■鉄  道 
 停電の影響で、首都圏の鉄道は相次いで運転を見合わせた。朝のラッシュ時とはいえ、お盆休みで乗客は普段の半分程度。1時間余りで運転再開した路線が多かったが、行楽に向かう家族連れなどが乗り継ぎの確認などで駅員に詰め寄る姿も見られた。

 東京メトロは同7時40分ごろから変電所の電圧が弱くなり、銀座、日比谷、半蔵門、東西の4線で運転が止まった。順次復旧し、同8時47分の東西線を最後に全線で運転を再開した。乗客10万3000人に影響した。

 東西線が乗り入れるJR中野駅では、東西線全線不通のアナウンスが流れ、JRに乗り換えを急ぐ通勤客や家族連れでごった返した。中野区に住むIT関連会社社員(24)は「月曜の朝の定例会議に間に合わない」とホームから携帯電話で会社に一報。「お盆なので今日の通勤はすいていると思ったのに」と困惑していた。夏休み明けで今日から出勤という30代の女性会社員は「仕方がないですね」と、土産物を手にJRに乗り換えた。

 一方、JRは、京葉線葛西臨海公園−西船橋間で停電し、上下線全線で約20分間運転を見合わせ、1万9000人に影響した。

 東京臨海部を走る新交通システム「ゆりかもめ」は午前7時38分から全線でストップ。駅の間で止まったものは、職員が駆けつけて乗客を誘導。港区のレインボーブリッジ上に止まった列車からは乗客約20人を降ろし、お台場海浜公園駅まで約2キロ、誘導路上を歩かせた。ゆりかもめは3時間近く止まり、1万4000人に影響した。

 都営地下鉄は、新宿、浅草、三田の各線で一時運転を見合わせ、1万7000人に影響。東京臨海高速鉄道も午前8時ごろから全線で運転を見合わせ、同9時10分に再開。東急電鉄は、変電所23カ所のうち7カ所に東京電力からの電気が来なくなり、田園都市線が午前7時40分ごろ、大井町線が午前8時20分ごろから運転を中止し、いずれも同8時35分に運転を再開、13万4000人の足が乱れた。京浜急行は川崎−品川間で運転を一時中止し、2万3000人に影響。小田急電鉄、京王電鉄もダイヤが乱れている。

 国土交通省によると、電車には複数の送電系統があり、一つが送電不能になっても他の系統でバックアップする。しかし、ゆりかもめなど長時間走行不能になった路線では、いずれの系統も停電によって使用不能になったとみられる。同省は、鉄道各社から送電系統について報告を求め、長時間の運休に陥った原因を調べる。

 ■エレベーター 
 首都圏で数万台のエレベーターを管理するビル管理会社「三菱電機ビルテクノサービス」によると、東京都内を中心に約900台のエレベーターが止まるなどのトラブルがあった。このうち、約20台で内部に人が閉じこめられたとみられる。同社の広報担当者は「通電して復旧しているものも多いと思うが、作業員が1台ずつ確認に回っている」と話した。

 また、「日立ビルシステム」で管理する都内や横浜市内のビルやマンションでも、三十数台のエレベーターで閉じこめがあった。午前10時までにすべて復旧し、けが人はいないとみられる。

 東京消防庁のまとめでは、午前7時40分すぎに東京渋谷区道玄坂と新宿区北新宿のビルでエレベーターが停止し、利用者が閉じ込められた。道玄坂では女性1人が救急隊に無事救出され、北新宿では男性(57)と女性(75)が自力で脱出して無事だった。

 川崎市多摩区西生田のマンションでは、2階に住む男性会社員(40)が、エレベーター内に約1時間閉じ込められた。緊急用インターホンで連絡を受けたエレベーター会社社員が救出、男性にけがはなかった。

 千葉県市川市消防局などによると、市川市で4件、浦安市で2件、マンションのエレベーター内に閉じ込められたなどと通報があったが、けが人はなかった。

 ■銀  行
 大手銀行では停電した東京都内と千葉県内の一部の支店で営業開始時間が遅れたり、ATM(現金自動受払機)が一時動かなくなり、現金の出し入れが出来なくなった。午前10時現在、各行のATMは復旧し、支店も通常通り営業している。

 住友信託銀行東京中央支店(東京都中央区)は停電のため、コンピューターなどが動かず、通常午前9時の営業開始時間を55分遅らせた。りそな銀行はATM8カ所が一時停止。三菱東京UFJ銀行は対策本部を設置し、ATMや支店の稼働状況を調べている。三井住友銀行、みずほ銀も調査中としている。

 一方、日銀(東京都中央区)は停電直後から自家発電装置に切り替えたため、銀行との間で資金や国債の決済をオンライン処理する「日本銀行金融ネットワークシステム(日銀ネット)」は正常に稼働し、業務に支障は出ていない。

 セブン銀行では東京、神奈川、千葉のセブン・イレブン内に設置してあるATM約200台が一時動かなくなったが、午前10時にはすべて復旧した。

 ■信号機
 都心で営業していたタクシー運転手によると、交差点の信号機がところどころで消え、警察官が交通整理をしていたという。しかし、警察官の姿がないままの交差点もあって、渋滞が相次いだという。運転手は「お盆休みで普段より交通量は少なかったが、それでもよく事故が起きなかったものだ」と振り返った。

 地下鉄の駅近くのバス停やタクシー乗り場には、通勤途中の会社員らが列を作った。50人以上並んだタクシー待ちの列を見て、汗びっしょりになって歩き始める会社員の姿も見られた。午前9時過ぎに地下鉄が相次いで復旧し始めると、バス停やタクシー乗り場は普段の様子に戻った。

 ■コンビニ 
 コンビニエンスストア最大手のセブン−イレブン・ジャパンでは、午前7時半から8時ぐらいの間に、東京都内や千葉県浦安市の店舗約200店で一時、店内が停電した。しかし、既に明るい時間だったことやレジなどは非常用電源で稼働するため、「お客さんへの混乱はなかった」(同社広報センター)という。

 ローソンでは、同8時過ぎから都内や川崎市など約30店で商品の発注などに使用するコンピューターの電源が切れたが、すぐに復旧し営業には影響はなかった。

 大手スーパー、イトーヨーカ堂でも午前8時前後に都内と浦安市の計5店舗で一時停電したが、同10時の開店前には復旧し、営業に影響は出ていない。【宇田川恵】

 ■東電  
 東京電力は14日午前10時前から、東京都千代田区の本社で断続的に記者会見を開いた。吉田薫広報部報道グループ課長は「考えられないことが起きた」と、想定外の事故であることを強調した。

 吉田課長は、東京都江戸川区と千葉県浦安市の間を流れる旧江戸川に架かる送電線が、クレーン船によって損傷を受けたのが原因と説明した。同社は午前7時40分ごろ、クレーン船による事故との情報を入手したが、確認作業に約1時間かかった。復旧の遅れの指摘に対して、吉田課長は「バックアップの送電線も損傷したことが影響している」と説明し、「通常の訓練通りに復旧に努めている」と繰り返した。【川辺康広】

 ■都立病院 
 東京都の病院経営本部によると、都立広尾病院(渋谷区)と都保健医療公社大久保病院(新宿区)で電力の供給が止まり、非常電源に切り替えた。このため、外来の会計システムなどが一時ストップしたが、午前9時半までに両病院とも復旧した。医療への影響はなかったという。

 ■TDL 
 千葉県浦安市の「東京ディズニーランド(TDL)」は、安全確認のため午前8時の開園時間を約50分遅らせた。大きな混乱はなかったという。運営会社のオリエンタルランドによると、開園後もTDLと東京ディズニーシー(TDS)の両パークでは、約30のアトラクションを安全確認のため、一時停止した。【倉田陶子】

 ◇海外通信社も速報 
 首都圏の停電について、海外メディアも速報した。ロイター通信は、月曜日早朝の通勤時間帯に東京を襲い、中には人がエレベーターに閉じ込められたり、交通網が混乱したなどと報じた。

[ 2006年8月14日16時10分 ]

 首都圏の約139万世帯に及んだ大規模停電で、東京電力は14日、クレーン船の接触事故で損傷した電線を含む送電ルートを、早ければ15日に再開させる見通しを明らかにした。
 このルートは「江東線」と呼ばれ、約27万5000ボルトの電力を供給する首都圏の大動脈。
 事故後に切り替えた別ルートによる送電は、ほかの設備に負荷がかかるような問題は生じないものの、東電では「電力需要が高い夏場を考慮し、電力の安定供給のため通常の状態に早く戻したい」として、復旧作業を急いでいる。
 東電によると、送電線は1系統につき3本で、事故があった千葉県浦安市付近の旧江戸川は、2系統計6本の電線が横切っている。今回、このうち2系統計3本の電線の金属部分が欠けるなどの損傷を受けた。
<大停電>想定外の幹線損傷、人口密集地を直撃 (毎日新聞)
 お盆休みの14日朝、首都圏を突然襲った大停電。被害戸数は東京都、千葉、神奈川県の約139万戸(事業所などを含む)に及び、交通網はマヒした。クレーン船が送電線を直撃するという「想定外」の事故だったが、復旧までの約3時間は「意外に早かった」との見方もある。とはいえ、停電は全国各地でいつ起きてもおかしくはない。構造上の問題や対策を追った。

 ◇事故起きた「江東線」 原発二基分の電力を送電中
 東京電力によると、クレーン船の接触事故が起きたのは、「江東線」と呼ばれる27万5000ボルトの幹線送電線だ。千葉県の複数の火力発電所から、新京葉変電所(同県船橋市)を経て首都圏に電力を運んでいる。
 事故のため、ここを通じて電力を受ける葛南(同県)、江東、城南、世田谷(以上東京都)、荏田(神奈川県)の五つの変電所への送電が止まり、5変電所から電力供給を受けている地域139万戸が一気に停電した。
 江東線は当時、原発2基分に相当する151万キロワットの電力を送電していた。「影響が大きかったのは5変電所のエリアが人口密集地だったため」と東電は説明する。
 6本ある江東線の送電線は3本を張り替える必要があり、復旧は16日にずれ込む見通しだ。 だが電力供給は事故後約3時間で復旧した。
 実は5変電所には、柏崎刈羽原発(新潟県)や長野県などの水力発電所から電力を供給する「東京西線」からも電線がつながっている。東電は送電をこちらに切り替えて電力を復活させた。

 電力中央研究所システム技術研究所の谷口治人所長によると、切り替え前に事故原因を調べ、送電を再開しても問題ないか安全を確かめる必要があった。この作業に3時間かかった。東電は、99年11月に自衛隊機が送電線を切断した停電以来、送電ルート変更のシミュレーションを重ねていた。これが奏功し、比較的スムーズに作業が進んだという。

 三菱総合研究所エネルギー研究本部の神津明本部長は「需給バランスが不安定になり、送電網全体に影響が拡大する可能性もあったが、東電はうまくこなした」と語る。

 ◇変電所で枝分かれ、「下流」の対策困難
 江東線は送電系統が二つあり、片方が切れても送電できる設計だった。しかし、2系統は共に、同じ鉄塔に取り付けられていた。今回や99年の停電では両方とも切れた。この構造に安全上の問題はないか。

 東電は「ここで切れると分かっていれば、別の鉄塔を作るなども可能だが実際には難しい。電線の地中化もばく大な費用がかかり、首都圏に入るすべての送電網でこうした対策を取るのは非現実的」と話す。「他の送電ルートを使うなどで解決するのが今の考え方。停電は100%起きないわけではないと理解してほしい」と弁明する。

 東電は東京を取り巻くように半円形の50万ボルトの超高圧送電網を設け、変電所間で融通しあって電力が途切れないよう工夫している。しかし27万5000ボルト以下の送電は、変電所から下流に枝分かれしながら一方向に流れる。ここで事故があると下流全域が停電する。こちらも環状のネットワークを作ればよいが、東電は「技術的に難しく、電圧の低い部分まで対応するのは無理だ」と説明する。【山田大輔】

 ◇東電 損害賠償請求へ
 14日の記者会見で東京電力の吉田薫・広報部報道グループ課長は「賠償を求めることになると思う」と述べ、送電線破損に伴う損害賠償をクレーン船の所有会社などに求める方針を明らかにした。
 同社によると、99年11月に航空自衛隊入間基地所属のジェット練習機が埼玉県狭山市の送電線を切断した墜落事故でも、設備の修復費用について自衛隊から賠償を受けている。吉田課長は「99年の事故と同様の扱いになると思う」と話す。空自によると、費用は東電や破損した民家を含めて計約1億3000万円という。
 一方、今回の事故で鉄道各社は振り替え輸送などの措置を強いられたが、賠償請求には消極的だ。JR東日本広報部と東京メトロ広報部は「請求権はあるが、人身事故や踏切事故など自社の設備が直接被害を受けたケースと異なる上、被害金額の算定も困難で請求は難しい」と一致した見解を示す。【川辺康広】
 ◇送電系統で明暗わかれた鉄道
 鉄道の場合、送電系統の仕組みが明暗を分けた。鉄道各社は、車両に電気を送る自社変電所がトラブルを起こした場合に備えて、電力会社の変電所から「常用」と「予備」の二つの供給ルートを確保している。さらに自社変電所がダウンしても、約10キロ圏内にある隣接の自社変電所から電気を供給する仕組みだ。
 しかし、あくまでも電力会社からの受け手である自社変電所のトラブルだけを想定しているため、電力会社からの供給そのものがストップしてしまえば、バックアップ対策も無効となってしまう。今回の停電被害がまさしくこのケースだった。
 例えば、8路線を運行する東急電鉄では、田園都市線など3路線が一時運休したが、事故原因と関係のない別の発電所経由の変電所から電力を受けていた路線では影響を受けなかった。
 一方、JR東日本に限っては違った理由で影響が少なかった。同社は、川崎市の火力発電所と新潟県小千谷、十日町両市にある水力発電所を自営電力源として使用。主に山手線など首都圏向けに使っている。東京電力から電気を買っている線区もあるが、同社の自営電力は総使用量の半分強に達するという。
 国土交通省は「想定外の事態」とみて今後、鉄道各社から送電系統について詳しい報告を求める。
 警察庁によると、14日朝の首都圏の大規模停電の影響で東京都内262▽千葉県118▽神奈川県41の計421カ所の信号機が一時停止した。信号機には一部で停電に備えて自家発電機能を持つ機種も導入されている。しかし、大半は電力会社からの電力が電源のため、停電すると、信号の明かりが突然消えてしまう「滅灯」の状態になる。
 今回は、信号機停止による交通事故は幸いにもなく、停電で故障した信号機もなかったという。
 事故がなかった遠因には、お盆の帰省の影響で首都圏の交通量が少なかったこともあるという。警察庁は「交通量が少なかったのは不幸中の幸いで、渋滞が悪化して混乱する事態も避けられた」と話している。
【遠山和彦、種市房子】
[ 2006年8月15日0時55分 ]

大停電 首都圏、31万人足止め お盆「真っ暗」…
首都圏の広範囲で停電が起き、止まった地下鉄からホームに下りる乗客=東京都千代田区の東西線竹橋駅で14日午前8時16分、平田明浩写す(毎日新聞)10時23分更新
 
停電・途中で止まった「ゆりかもめ」
首都圏で14日午前に起きた大規模停電で、東京臨海部を走る「ゆりかもめ」は駅間に8本の電車が停止。計約340人の乗客が炎天下、高架の軌道脇などを歩いて最寄り駅まで移動した(東京都江東区豊洲)(時事通信社)13時33分更新

Yahoo!ニュース

こちらから引用させていただいています